累乗根の [1/1] パデ近似
はじめに
点 の周りにおける 関数 の パデ近似とは, 有理関数 (ただし , はそれぞれ , 次多項式)であって, の周りにおけるテイラー展開の係数が 元の関数 と 次まで一致するもののことである[BG, p. 1].
累乗根の [1/1] パデ近似は覚えやすい形をしており,計算精度も高い. この記事では, の周りにおける 乗根関数の [1/1] パデ近似の式を導く. また,応用例として , の近似値を計算する*1.
導出
[1/1] パデ近似なので, 分母・分子が共に1次の有理関数であって, そのテイラー展開が累乗根のテイラー展開と2次の項まで一致するものを求めたい. はじめに,関数 を の周りで展開する. とおくと, である. 次に, を の周りで展開する. 先ほどと同様に とおくと,次のようになる.
と のテイラー展開が2次の係数まで一致すると仮定すると次の式を得る. この連立方程式を解く. 未知変数は の4つであるが,条件が3つなので自由度が1つ余る. ただし,この自由度は分母と分子を定数倍するだけなので,関数 は結局1つに定まる.
まず, より , としてよい. これを代入すると を得る. ここから , が分かる. 以上より となる. を で置き換えると,最終的に次の式を得る. たとえば, のときは次のようになる.
係数の順番がややこしいが, を代入したときに誤差が小さくなる方と覚えておくと忘れにくい.
計算例
例1. 47 の平方根を考える. とおくと次の近似値を得る. 実際には (相対誤差 2.3 ppm)である.
例2. 42の立方根を考える. とおくと 次の近似値を得る. 実際には (相対誤差 0.21 %)である. 精度を上げるため, に近い簡単な分数として適当に を取ってもう一度計算すると を得る(相対誤差 0.22 ppm).
追記1:ハレイの方法について
(2024-01-09 作成)
この記事について愛知県の林邦英さんからお手紙 (2023.11.29) が届いた. 大変ありがたいことです. 林さんについて調べてみると,連分数論や近似論について精力的に研究なさっているようで, 沢山の研究資料がオンラインで公開されている *2. その中でも資料 [H] によると, 平方根の近似式 にはハレイの方法という名前がついているらしい. これは知らなかった. 博論の提出が終わったらハレイの方法についてもう少し調べたい…….
林さんからのお手紙には,常用対数の計算手法に関する結果もまとめられていた. しかしまだきちんと読めていない……大変申し訳ないことです. 内容をちゃんと理解できたら別記事とお返事のお手紙を出したい.
更新履歴
- 2022-09-14: 公開
- 2023-04-02: Document ID を追加
- 2023-12-03: 名前を間違えていたので訂正
- 2024-01-09: 追記1(林さんからのコメントを受けて)
Permanent ID of this document: 4a465cdb12bc8608219aff4fd20e7b4a